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RDAB (1日栄養所要量)は、米国の一般市民の健康維持に必要な栄養摂取量のガイドラインとして、米国国立科学アカデミーによって提唱されました。 疾病防止のために必要な様々な栄養素の最低所要量を示したものです。 提示された量は、一般市民には充分なものですが、果たしてボディビルダーには充分なのでしょうか? 常に高強度のトレーニングに励むボディビルダーにとっては、決して充分な量とはいえません。 トレーニングを効果的に行うにも、病気の予防のためにも、アスリートにはRDA推奨量以上の栄養が必要です。 ボディビルダーに特異な必要条件があるからです。 そこで、ボディビルダーの為の最低栄養摂取量の一般的なガイドラインがあればいいとの考えから、RDAB(ボディビルダーのための1日栄養所要量)を提唱することにしました。 適正な身体機能を維持し、運動パーフォーマンスを向上させるためには、アスリートは多量の栄養を摂取しなければならない事を示した研究もあります(1)。 ここでは幾つかの重要栄養素についての考察を行い、RDAとの比較も示します。 ボディビルダーの需要に基づいて新しいRDABを設定したいと思います。
タンパク質: タンパク質は、筋の成長と機能に不可欠なアミノ酸に分解されます。一般男子のタンパク質RDAは1日約56グラムとなっていますが、ボディビルダーは、高強度トレーニングによって引き起こされた身体のカタボリック状態から回復するために、より多くのタンパク質を必要とします。また除脂肪筋肉増大のためにも余分のタンパク質が必要です。(これは私自身も含め、ほとんどすべてのボディビルダーのゴールだと思います。)タンパク質のRDABは、体重1kgにつき2.2gを1日何度かに分割して摂取するということにしましょう。
ビタミンCまたはアスコルビン酸は、ボディビルダーをはじめ、高強度トレーニングを行うアスリートにとって不可欠な水溶性ビタミンです。抗酸化機能、コラーゲン合成(2)、免疫強化効果、コルチゾール レベルの低下などをはじめ幾つかの機能があります。ビタミンCの研究における権威者の一人であるライナスポーリング博士によれば、ヒト、サルや類人猿を除くほとんどの動物は、食物から摂取しなくても内因的にビタミンCを合成できるそうです。それらの動物は、肝臓でそれぞれの体重に見合った量のビタミンCを生成します。 これは普通の成人の場合、大体10-12gという計算になります。ヒトが外因性ビタミンCを必要とするのは、アスコルビン酸合成に必要な酵素の一つである、グロノラクトン オキシダーゼが欠けているからです(3) 。ビタミンCは体内のフリーラジカル(遊離基)の発生を防ぎます。 フリーラジカルは体内の様々な酸化損傷の原因となります。ビタミンCが風邪の罹患期間や症状の軽減に大きな効果を持つことはすでに明らかされています (4)。病気になると正しくトレーニングする事ができなくなり、苦労して得た筋肉も落ちてしまう結果になります。 また、ビタミンCは、コルチゾールレベルを低下させることによって、テストステロンの対コルチゾール比を上昇させることが解っています(2)。 コルチゾールは、高強度のウェイトトレーニングなど、身体にストレスがかかる時に分泌されるカタボリック ホルモンです。ビタミンCにはコラーゲン生成を促す働きもあります。コラーゲンは、皮膚、筋肉、骨を強化するので、ヒトの体内では非常に重要な物質です。靭帯と腱は主にコラーゲンからなっていますが、靭帯と腱の健康維持におけるビタミンCの重要性を立証した研究は数多くあります(2,5)。コラーゲン生成を促す反応にもビタミンCが必要です(3)。ボディビルダーは、正しくトレーニングするために関節が健康でなくてはなりません。これは特に長年トレーニングを続けているボディビルダーについて言える事です。さらにビタミンCは、カルニチンの合成にも重要です。充分なカルニチンが生産される事は脂肪の分解にとって大切なことです。というのは、脂肪の分解が起こるミトコンドリアへ長鎖脂肪酸を輸送するのを助けるのがカルニチンだからです。神経伝達物質の合成とコレステロールの異化作用にも、ビタミンCが重要な役割を果たします(3)。 これといって秀でたビタミンC製品はないので、ただのアスコルビン酸で充分用が足ります(6)。食品のビタミンC源としては、オレンジ ジュース、パパイヤ、カンタロープ(果肉がダイダイ色のメロンの一種)、 ブロッコリーなどがあります。一口に言って、ビタミンCはボディビルダーにとって大変重要なビタミンです。 ビタミンCのRDABは1日6グラムとしましょう。 ワークアウト後の炎症を軽減するためには、ウェイト トレーニングをする前に2g摂取するといいと思います。
ビタミンAとはレチノールとレチナールを指します。レチナールの副生成物がレチン酸です。 プロビタミンAはベータカロチンのことで、体内でレチノールに変換されます。ビタミンAは、視サイクル、細胞分化(細胞の発達をコントロールする遺伝子発現に影響を与える)、成長(上皮細胞の成長を刺激し、成長因子の特異的受容体数の増加に寄与すると思われる(7))、男子、女子の生殖過程、骨の発達、免疫機能の働きなどに関与しています。ビタミンAは亜鉛、ビタミンK、ビタミンEと共同作用し、これらの栄養素が欠乏するとビタミンAの機能にも支障をきたします。ビタミンAの食品源には、牛レバー、サツマイモ、人参、ほうれん草などがあります。ビタミンAの機能の多くがボディビルダーにとって重要なため、RDABは1日30,000IUとしましょう。
ビタミンDは骨格の成長と強さに関与しています。 カルシトリオール、1,25-(OH)2 D3がビタミンDの活性型と考えられており、ステロイド ホルモンに似た働きをします。血中カルシウム濃度のホメオスタシスを司る副甲状腺ホルモンに、重要な役割を持っています。 副甲状腺ホルモンは腎臓の遠位尿細管におけるカルシウムとリンの再吸収を促進します(8) 。 正常な成人の身体は、太陽の光にあたると体内でビタミンDを製造します。 またビタミンDは、長期のボディビルダーに時々みられる関節炎の発現を遅らせることもあります。 ビタミンD源には、陽光や、ビタミンD添加牛乳などがあります。 ビタミンDのRDABは、日照時間の長い地域では500IU、日照時間が少ない地域では、700IUとしておきましょう。
ビタミンEには植物によって合成された8種類の異なった化合物が含まれてます。 ビタミンEの活性度が最も大きいのが、アルファ トコフェロール、厳密にはd-アルファ トコフェロールで、脂溶性ビタミンです。 ビタミンEの主要機能は細胞膜を健全に保つことで、膜の安定性に寄与すると考えられています(9)。 細胞膜のリン脂質の不飽和脂肪酸の酸化(過酸化)を防ぐ、強力な抗酸化作用があります。フリーラジカル(遊離基)を防ぐ効果があるのです。 ビタミンEはセレニウムとの間に相互関係を有し、両栄養素ともグルタチオン ぺルオキシダーゼ(体内の強力抗酸化物質)の機能に密接に関係しています。 ビタミンEはビタミンCの働きによって、再生する事ができます。 ビタミンEの豊富な食物は植物種油です。 このRDABは1日800IUに設定しましょう。 ビタミンEの摂りすぎは他の脂溶性ビタミンの機能を損なう(8)ので、ビタミンEを多量に摂取する事はお勧めしません。
ビタミンKは脂溶性ビタミンで、血液凝固に不可欠な役割を持っています。 事実上骨基質を強化する事もあります(10)。 葉緑野菜や、大豆などがその食品源です。 ビタミンKを多量に摂取しても役には立たないと思いますが、欠乏しては困るので、1日100mcgの RDABを摂りましょう。
チアミン(ビタミンB1)は、血液中では主にチアミン一リン酸(TMP)の形をとります。 チアミンは体内で、そのリン酸化型であるチアミン二リン酸(TDP)に変換することもあります。TDPは、ピルビン酸とアルファ ケトグルタレートの酸化的脱炭酸反応に必要な補酵素として機能します。 この反応はATP(エネルギー)生産にとって不可欠なもので、筋肉機能を高めるのに大変重要となります。 チアミンは神経伝導にも重要で、記憶力に関与する神経伝達物質、アセチルコリンをミミック (摸倣)し、その効果を強化すると考えられます(11)。 コーヒーはチアミンの効果を妨げる事があるので、コーヒーと一緒にチアミンを摂ることはお勧めしません。 チアミンを供給する食品源としては、イースト、ひまわりの種、豆類などが挙げられます。 RDABは1日60mgとしましょう。水溶性のビタミンは、摂りすぎても尿と共に排泄されるので、殆ど毒性がありません。
リボフラビン(ビタミンB2)には、フラビン モノヌクレオチド(FMN)とフラビン アデニンジヌクレオチド(FAD)の二つの補酵素型があります。 これらの補酵素は、体内の多くの代謝反応に機能します。 水素原子を二つ取り入れる事ができるので酸化剤として作用する事ができるのです。 これはコリン代謝の一部で、ドーパミンなど他の神経伝達物質もその代謝にFADを必要とします。 ドーパミンはエピネフリンとノルエピネフリンに変換して、エクササイズ中のエネルギー発生を刺激します。 リボフラビンを豊富に含む食物には、牛レバー、脂肪の少ないサーロイン ステーキ(上部腰肉)、きのこ類、リコッタ チーズなどがあります。 リボフラビンのRDABは、一日25mgに設定しましょう。
ナイアシン (ビタミンB3) はニコチン酸またはニコチンアミドとも呼ばれています。 肉に含まれるナイアシンは遊離型のニコチンアミドとして存在します(12)。ナイアシンはNADとNADPの2種類のヌクレオチドとして発生し、肝臓でアミノ酸トリプトファンから生成する事もできます。 NADとNADPを必要とする酵素は200ほどあり、NDPはATP(エネルギー)の生産に寄与します。NADPHは、脂肪酸の合成、コレステロールホルモン、ステロイド ホルモンの合成、グルタミン酸塩の酸化などを含め、あらゆるプロセスに使われています。また、ビタミンCの酸化型であるデヒドロアスコルビン酸塩を減少させると考えられています。ナイアシンがコレステロールを低下させる事も明らかにされていますが、空腹時に摂取すると紅潮(赤らみと血管拡張)を起します。また、高用量のナイアシンは肝臓に負担をかけます。 血管を鮮明に出すためにヨヒンベと一緒に使用しているボディビルダーもいます。血管拡張の働きがあるため、血管を出すのにかなりの効果があります。ワークアウト中のエネルギー増大にも効果があり、私はワークアウト前に300-400mgを摂取して上々の結果を得ています。肝臓の調子が悪かったり、ナイアシン紅潮の問題がある場合は、肝臓にやさしく、紅潮を起さないヘキソニコチン酸イノシトールを試してご覧になることをお勧めします。 ナイアシンを含む食品には、マグロ、鶏胸肉、牛肉などがあります。 リ ボディビルダーにとっては重要なビタミンなので、ナイアシンのRDABは1日200mgに設定しましょう。
ピリドキシン (ビタミンB6) には数種類の形態があります。 加熱、缶づめ加工、冷凍、その他の食品加工過程は、食品中のビタミンB6を減少させます。このビタミンの補酵素型は非常に多くの酵素に関連づけられおり、それら酵素の大半はアミノ酸代謝に関与するものです。 また、ビタミンB6はヘムの合成にも必要です。 トリプトファンからのナイアシン合成には、PLP(ピリドキサル 5-リン酸)が必要ですが、このPLPはビタミンB6の形態の一つです。 炭水化物からエネルギーを発生するグリコーゲンの異化作用に必要とされます。 ビタミンB6が糖質コルチコイド ホルモン(コルチゾール)など特定のステロイドの作用を抑える事も解っています(14)。 ボディビルダーは、無駄のない筋肉の発達とオーバートレーニングの症状を防止するためにも、 コルチゾールのレベルを断固として抑えなくてはなりません。 ビタミンB6の食品源には、サーロイン ステーキ、白インゲン、ジャガイモなどが含まれます。 ボディビルダーにとって重要な機能を持つビタミンなので、ビタミンB6のRDABは、1日25mgとします。
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