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細胞外マトリックスについて
さて、筋肥大においては収縮タンパク質だけではなく、細胞外マトリックス(ECM)の増大も考慮しなくてはならない。 ECMの主骨格は当然ながらコラーゲンであるが、コラーゲンの産生を刺激する為にはネガティブエクササイズが重要とされる。またネガティブにより前述の c-fos, c-jun, c-mycなどの転写調節因子発現も増大することがわかっているため、さらにその重要性は増すだろう。また、コラーゲンの三つ編み構造をつくるためにはビタミンCが必要である。さらに繊維性コラーゲンの「Yの位置」にあるアルギニンは、螺旋構造の安定性を増す。これらのことも頭に入れておきたい。
また、ギプス固定(immobilization)により筋及び結合組織の萎縮が起こるが、これは筋を短縮した状態または生体長で固定した場合に顕著であり、ストレッチした状態では抑制されるとのことである。すなわち、コラーゲンの生成はストレッチ刺激によりコントロールされるということが示唆される。ここでもまたストレッチの重要性が明らかとなった。
なお、Stoneの報告によれば、短時間の負荷運動では強度が強い方が、持久的な運動では時間が長い方が、結合組織の強度を高めるために効果的だということである。これはビルダーが怪我をしてリハビリを行うときには、ある程度の高い強度でトレーニングすべきだということを示すことになるだろう。
面白い事に、筋芽細胞の誘導・分化過程にECM分子が直接的に影響する、という報告がある。骨格としてのECMがダイナミックに刺激され、それが筋細胞や筋芽細胞を刺激しているのであろうか。
ラットにダウンヒルランニングを行わせた実験によれば、筋内コラーゲンのmRNAレベルは運動後12日から4日後にかけて上昇し、コラーゲン生成の活性化が起こった。しかし14日目のコラーゲン組織内濃度は変化しなかったということである。よってトレーニング頻度としては、少なくとも同一部位を4空け、しかし14日よりはずっと短くするようにして刺激するべし、という仮説がここから導かれる。
そしてこの実験においては、ダメージの観察されなかった筋においても、同様の傾向が見られたということである。これは必ずしも筋発達において、筋破壊が必要なのではない、ということを示すのかもしれない。ハッキリ言えることは、たとえ筋肉痛が来なかったとしても、同じ部位をトレーニングするときには4日は開けましょう、ということである。
ネガティブトレーニングについての付記
さいごに、ネガティブトレーニングについてもう一言したい。ネガティブ刺激によって筋は破壊されるが、その初期の変化としてジストロフィンが焼失する。メカニカルストレスによって細胞膜が損傷し、そこから高濃度のカルシウムイオンが流入してホスホリパーゼA2の活性を高め、細胞膜の損傷を進行させるとともにジストロフィンも壊されると考えられている。また、タンパク質を分解する酵素の一つ、カルパイン(カルシウム依存性中性プロテアーゼ=CANP)が活性化することによりタンパク分解が亢進するが、これは筋小胞体のカルシウム放出&保持&取り込みが上手くいかなくなったとき、すなわちオールアウトしたときに活性化する。筋細胞中のカルシウム濃度の変化そのものが、ここでは重要となってくるため、筋小胞体からのカルシウム放出を刺激するカフェインなどの摂取は重要となろう。
また、ネガティブにより筋の回復が遅れるのは細胞内にグルコースを取り込むGLUT4が破壊されるからである。これはバナジウムの摂取により抑制されるため、ネガティブトレーニングをするときにはバナジウムの摂取も推奨したい。
以上、簡単ながら分子生物学的に筋発達についてアプローチしてみた。今後、新たなる実験結果などが発表されれば、その都度みなさんに紹介していきたい。
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