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持久力運動で成功するためには様々な遺伝的および生理学的要素が関わっている。その要因の多くは自分でコントロールできないものだが、持久力アスリートの成功に一つ大きな役割を持つものとして、トレーニング時と競技時の水分と栄養の摂取がある。そこでここではビッグレースのための食事と飲み物戦略について説明しよう。
燃料の利用
持久力運動中、体は筋肉グリコーゲン、血中グルコース、筋肉トリグリセリド、そして脂肪組織からの遊離脂肪酸を使ってATPに燃料を供給する。これらの基質が利用される相対的比率は、エクササイズの強度と時間及び各基質の供給量に依存する。持久力運動中のエクササイズ強度が増すと利用される炭水化物の量が増えるが、炭水化物の供給量には限度があるため、エクササイズを続けると(そして体の貯蔵炭水化物が消耗すると)こんどは貯蔵脂肪が利用される。しかしあいにく脂肪の代謝はそれほど効率的ではなく、炭水化物が底をついてくるとエクササイズの強度も低下してしまう。普通体はマラソンを数回走っても余るくらいの脂肪を貯蔵しているので、持久力運動のための食事はその炭水化物量に重点を置かなくてはならない。
レース前
これから行う高強度の運動に備えて血中グルコースを供給し、筋肉のグリコーゲンを満タンにするためには、レースの2〜4時間前に比較的カロリー密度の高い食事をするか、レース前の2〜5時間の間に少量の食事を数回食べることが絶対に不可欠だ。こうした食事をすることによって運動に必要な燃料となる栄養素を供給できるので、体が貯蔵エネルギーの使用を強いられるまでにかなりの時間エクササイズを続けることができる。そして疲労を遅らせてパフォーマンスも高まることになる。一方、食事をしそこなったり早すぎる時間に食べたりすると、体はその食事から得た栄養素をすでに使い果たし、レースのコースに足を踏み出すまでにすでに貯蔵エネルギーまで使い始めているかも知れないのだ。これでは時期尚早に疲労してパフォーマンスも低下してしまう。
レース前は食事と食事の間を長く空けすぎないようにするのが大切だが、同じく出場時間近くに食べないことも大切だ。レースの1.5時間から30分前に大きな食事をすると、次の二つの問題のどちらかが起こる可能性が高い。一つは胃腸の不快感。出場前近くに食べるとお腹が張ったり気分が悪くなったりする。もう一つは「反動的低血糖」といわれるものだ。炭水化物を食べるとすぐにインスリンが分泌される。インスリンの機能は摂取した炭水化物を血中から取り除いて筋肉、肝臓、脂肪組織などの貯蔵部位にデリバリーすることだ。食事をすると血糖が上がり、その反応としてインスリンが分泌されて血糖が下がるのである。インスリンは貯蔵ホルモンなので栄養素の動員を阻み、それが体内にある限り炭水化物を細胞内に閉じ込めてしまう。
さて、レースよりもかなり前に食事をすると、体は血中の炭水化物を除去し、栄養素を貯蔵し、競技が始まる前にインスリンもクリアーすることができる。しかし食べる時間が近すぎると、インスリンがいまだ血液からクリアーせず、レースが始まる頃体にはわずかな血中炭水化物しか残っておらず(これは倦怠感を起こす)貯蔵燃料の動員も難しくなる(早期に疲労を起こす)。そのためレースの2〜4時間前に大きな食事をするか、レース前の2〜5時間の間に少量の食事を数回すると、時期尚早の疲労や低血糖を起こすことなく体のエネルギーに燃料を供給することができるのだ。この食事対策を適切な炭水化物ローディングと併せると、必ず炭水化物燃料を満タンにしてレースに挑むことができるだろう。
[レース前に摂るべき食事内容の一例]
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十分な水分(1リットル) |
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炭水化物4〜5g/kg(体重70kgの場合300g) |
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タンパク質少々(20〜40g) |
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脂肪少々(10〜20g) |
これは非常にたくさんのカロリーのように見えるが、これを全部一度に食べる必要はないことを念頭に入れておきたい。2時間から3時間の間に分割して摂る方が食べやすいこともある。
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全卵 2個 |
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全粒粉のパン 3切れ |
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バナナ 2本 |
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レーズンブラン 3カップ |
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低脂肪乳 1カップ |
レース中
前述通りの食事を摂ればグリコーゲンの貯蔵を満たしてレースに挑むことができるが、それで終わりではない。もう二つの潜在的な敵と戦う必要がある。それは脱水とグリコーゲンの急速な利用と枯渇である。まずグリコーゲンから始めよう。
筋肉の貯蔵グリコーゲンを満たしてレースを始めることは重要だが、体は利用できる炭水化物がたくさんあるとそれだけ速く使い果たす傾向にあることを知っておくことも大切だ。あいにく筋肉のグリコーゲンは一杯にしておいても枯渇するのである。これを防ぐためにはレース中スポーツドリンクやジェルを飲まなくてはならない。エクササイズ中、体は1時間につき約60gの炭水化物しか利用することができないので、ガトレードやパワーレードなどのドリンク(またはスポーツジェル)を1時間に1回分か2回分摂り炭水化物をサプリメントすれば良いだろう。
上記のアドバイスは炭水化物のニーズしか考慮に入れていないが、水分の必要性も考えなくてはならない。気温が高く湿気の多い日には1時間に2〜3リットルの水分が体から失われる。この水分の喪失は1時間に1.8kg〜2.7kgの体重を失うのに相当し、これは許容できないレベルだ。体重の1〜2%というわずかな低下(体重68kgランナーなら、680g〜1.36kg)でも血液容量、一回排出量、心拍出量、酸素消費量を損なうことがあるため、この水分の喪失はパフォーマンスに有害なのだ。そのため脱水の防止に1時間に2リットルの水を飲むよう注意するべきである。
[競技中の水分と栄養補給の仕方の例]
・ 毎時間水を2リットル飲み、パワージェルタイプのものを2回分摂る。
または
・ 粉末ガトレードかパワレードなどの製品2回分を2リットルの水に薄めて摂る。
レース後
フィニッシュラインを超えても栄養摂取の戦いは終わったわけではない。まだもう一つ体への責任を果たさなければならない。持久力エクササイズが骨格筋を消耗し損傷するのは筋力エクササイズと変わらないので、レース後はすぐに補充と修復のプロセスを始めなくてはならない。詳しくは別の記事に書いたが、要約するとエクササイズ後の時間帯は栄養の補充と損傷した筋肉の修復に最適な時間なので、消化の良い液体の炭水化物とタンパク質を摂取することだ。エクササイズ後の対策には以下栄養素が含まれていなくてはならない:
・ 炭水化物0.8g/kg(体重70kgのランナーなら56g)
・ タンパク質0.4g/kg(体重70kgのランナーなら28g)
[この時間帯に摂ればよいドリンク/食事の例]
・ バイオテストのサージなど特別に配合されたリカバリードリンク(305カロリー)
−タンパク質25g、炭水化物50g、脂肪0.5g
・ ホエイプロテイン1回分+ガトレード2回分の自家製リカバリードリンク(369カロリー)
−タンパク質25g、炭水化物66g、脂肪0.5g
その後、夜まで2時間毎に同じドリンクを摂取し必ずタンパク質と炭水化物を含む食事をすること。
カーボローディングはなぜ必要か?
強度の持久力エクササイズのパフォーマンスは貯蔵炭水化物(肝臓と筋肉のグリコーゲン)と貯蔵脂肪(筋肉と脂肪組織のトリグリセリド)の組み合わせを燃料とすることが多い。持久力アスリートの燃料の需要には脂肪の燃焼が大きく貢献するが、強度の運動中のエネルギー源としてこれが最適でない理由は幾つかある。まず脂肪の代謝速度は炭水化物の代謝に比べて遅い。そのため即座のエネルギーを要求する強度の運動中、脂肪の代謝は迅速にエネルギーを供給することができず、体はスローダウンする。二つ目は脂肪の代謝は炭水化物の代謝より多くの酸素を要するので、非能率的なことだ。
そういうことで、十分な炭水化物がないと持久力アスリートはあの忌まわしい「ボンキング」の犠牲になってしまうのだ。体内の貯蔵炭水化物の量は限られているので(体重70kgの場合貯蔵できる炭水化物は全体で約400gだ)、90分以上の持久力レースでは筋肉グリコーゲンが枯渇して早期に疲労を招く結果になる(そしてどこかのおばあさんに追い抜かれてしまったりする)。体内の炭水化物は脂肪より優先的に利用され、高強度のエクササイズ中は急速に消費されるので長時間のレースでは体の貯蔵炭水化物を何とかして増やせばパフォーマンスを促進できる。貯蔵グリコーゲンを高める一つの方法としては、レース前のカーボローディングがある。カーボローディングの要領に従うと貯蔵炭水化物を大幅に増やすことができる(筋肉グリコーゲンが倍増することもある)ので、レース後半のエネルギー源となる。そのため長時間の持久力レースに出場するなら必ずカーボローディングを試してみるべきだ。
カーボローディングの仕方
長年いくつかのカーボローディングの方法が提唱されてきた。その原型となった方法は恐ろしく、低カーボのダイエット(50g以下)を3日続けると筋肉グリコーゲンの貯蔵酵素が増大するという事実に基づいたものだ。これによると、レースの6日前から3日間の低カーボダイエット(その3日間は高強度なエクササイズも行う)で筋肉グリコーゲンを枯渇させ、その反動として体はレース直前の3日間に炭水化物を貯蔵する。この3日間はただ休養し、超高炭水化物(体重1kgにつき炭水化物10g)の食事をし、筋肉がエネルギーで膨らむのを見守るだけでよい。ただしこのオリジナルの方法には一つ問題がある。通常炭水化物を食べるのに慣れているアスリートがこの方法に従うのは非常に難しかったことだ。そのうえ3日間も炭水化物をそれほど低レベルまで枯渇させると、その期間はパフォーマンスが低下してしまった。パフォーマンスは最終的には貯蔵グリコーゲンと共に回復したが、この現象はアスリートに精神的苦痛を与えて大恐慌を引き起こしてしまった。考えてみたまえ。レース前、最後の3回の練習は彼ら最悪のパフォーマンスだったのだ。そのため別の方法が編み出された。以下はもっと近代的なカーボローディング方法で、前述の方法に近い効果がありしかももっとやり易い。
6日前: トレーニング日: 低カーボダイエット(炭水化物200g以下)*
5日前: トレーニング日: 低カーボダイエット(炭水化物200g以下)*
4日前: トレーニング日: 低カーボダイエット(炭水化物200g以下)*
3日前: 回復日 : 高カーボダイエット(炭水化物10g以上/kg)**
2日前: 回復日 : 高カーボダイエット(炭水化物10g以上/kg)**
1日前: 回復日 : 高カーボダイエット(炭水化物10g以上/kg)**
レース日
*低カーボダイエットの日はエネルギー摂取量を同一に保つため、よい脂肪(オメガ3脂肪酸と一価不飽和脂肪酸)と完全タンパク質の摂取を増やさなくてはならない。炭水化物は毎日の栄養摂取量のうちわずかな割合を占めるだけとなる。
**高カーボダイエットの日の食事は80%以上炭水化物でなくてはならないので、脂肪とタンパク質摂取量を減らすこと。
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