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レプチンの驚異 ―減量中でも筋肉を維持する秘密!

By ブライアン・ヘイコック Bryan Haycock

レプチンの発見 ― 体重を守る「セットポイント」説

体が体重の変化に抵抗する傾向は長年認められている。正常な条件下で一時的に食べ過ぎたりするのはアメリカ人が祭日によくやる事だが、それで体脂肪が増えてしまってもその後食欲は徐々に抑制されて元の体重に戻るのが普通だ。同様にこれはもっと良くある例だと思うが、ダイエットをして減量に努め、体脂肪の減少に成功しても食欲がだんだん増してまた元の体重に戻ってしまい、全くがっかりすることがある。 このようにどうしても戻ってしまう体重を「セットポイント」という。

1994年「肥満遺伝子」発見

研究者達がこの「セットポイント」のメカニズムの中枢は脳にあると推測したのは50年代にさかのぼる(1)。 それ以来ずっとこのメカニズムを理解するために模索し続けてきた。 そして1994年、8年間の探索の末、ある研究者グループがセットポイント減少の主要因子とみられる遺伝子を同定した(2)。 この遺伝子をマスコミはすぐさま「肥満遺伝子」と命名したが、この「肥満遺伝子」をコードするタンパク質はレプチン(ギリシャ語源Leptosは「細い」と言う意味)と名づけられた。 以来このパワフルで複雑なホルモンに関する研究の数は飛躍して増加し、そのほとんどはこの魔法の弾丸の専売特許を取ろうとする製薬会社がスポンサーしている。

ぜレプチンが気になるのか

レプチンの濃度は体内の他のホルモンレベルに影響を与える。食事に変化があると、レプチンが他のホルモンのレベルを変えてしまうのだ。 こうして食物の摂取とホルモンレベルを関連つける橋渡しとなっている。 2、3の例を挙げれば、甲状腺ホルモン、コルチゾール、テストステロンのレベルもレプチンによって影響される。 レプチンの受容体は肺、肝臓、腎臓、膵臓、性腺などの末梢組織に広く分布しており、インスリンや性ステロイドの産生と分泌にレプチンが相互作用する結果、脂肪細胞によるレプチン分泌を左右してフィードバックのシステムを作る(3)。ダイエットを始めると、レプチンのレベルが低下するとともに体のホルモンレベルにも変化が起こり、体脂肪の減少を困難にしてしまうのだ。 しかしレプチンを増加すると、これらのホルモンのレベルがアップ レギュレートされ、満腹した状態に似たホルモンプロフィールを形成する。 この状態が脂肪減少を大いに促進し、同時に筋肉も維持できるようにするのだ(4)。

レプチンは脂肪細胞に直接影響する

脂肪細胞には、それをコントロールするアクセルとブレーキが備わっている。 これによって脂肪分解速度が緻密にコントロールされているのだ。脂肪細胞内のcAMP蓄積を阻害するアデノシンとその受容体がブレーキの役目を果たし、ベータアゴニストとその受容体はアクセルの役目をしている。 レプチンは、そのブレーキとなるアデノシンの脂肪細胞内での働きを阻止することが解明されている。

レプチンはその受容体を通して、脂肪分解を遮断するアデノシンの作用を妨害する働きがある(5)。これはベータアゴニストの脂肪分解刺激能力を高めるものではないが、いわゆる「基礎代謝」率を上昇させる。基礎代謝(脂肪分解)とは安静時における脂肪分解のことで、言い換えれば、外からの脂肪分解のシグナルがなくても、どれだけの脂肪が分解されるかを示すものだ。

レプチンは次世代のパーフェクトなダイエット薬?

JAMA誌(Journal of American Medical Association)に、1997年4月から1998年10月まで行われたランダム化二重盲検プラセボ比較用量増加試験の結果が発表された(6)。

この試験は、平均年齢39歳の、痩せ型の54人と肥満体73人の男女が参加して行われ、参加者は毎朝皮下注射の自己投与を行った。 投与量は0.01mg/kgから0.30mg/kgで、痩せ型の被験者はメンテナンスカロリー量を、肥満体被験者はそれより1日500kcal少ない食事を与えられた。

レプチンを用量増加しながら投与して4週間で、被験者全員の体重がベースラインより減少した。痩せ型の被験者は既に痩せているため、4週間後にレプチン投与は打ち切られたが、肥満体被験者は24週間の治療期間を通じて継続的に脂肪が減少した。試験開始4週間後における体重の平均変化は 、用量0.1mg/kgでプラセボ群の−0.4kgから −1.9kg、24週間後の平均体重変化は0.01mg/kgの投与量で-0.7mg、0.30mg/kgの投与量では−7.1kgであった。 また24週間目において用量上位1、2位の投与量では、体重減少の95%以上はすべて脂肪の減少によるものであった。

この研究で示されたレプチンの効果のユニークな点は、脂肪が劇的に減少したにもかかわらず、筋肉は殆ど完全に保存されていたことである。

これがボディビルダーにとってどんな意義があるのか?

太っていればいる程、ダイエット中に筋肉を失う率は少ない。 贅肉がとれてくるとレプチンのレベルも低下し、脂肪細胞が燃料源として使用されることに対して一層抵抗力を持つようになる。ということは、痩せるにつれて筋肉組織がより一層カタボリズム(筋肉分解)の犠牲になりやすくなるのだ。

普通のダイエット状態では、筋肉と脂肪は五分五分の割合で減少する。そのためボディビルダーは、コンテスト準備ができた頃には、悪戦苦闘して落した脂肪と共に筋肉もかなり失ってしまっているのだ。幸い、ウェイトトレーニング、アナボリックホルモンそしてエフェドリン+カフェインなどの助けをかりて、カロリー制限中の筋肉喪失を改善することができる。これにレプチンを加えたとすれば、コンテスト準備中の筋肉喪失などもはや過去のものとなるかも知れない。

ではレプチンはどこで手に入るのか?

残念ながら、まだレプチンは一般には入手できない。入手可能になっても処方箋を必要とするだろう。 だからといって諦める必要はない。少しずつ努力して、体内のレプチンのレベルを自然に高める方法があるのだ。

第一はカロリーをサイクルすればよい。短期のカーボローディング(カーボアップとも呼ばれる=炭水化物を一定期間多く摂取する。)が、一時的にレプチンのレベルを上昇させることは研究によって明らかにされている。 太っているほど体内のレプチンが多いことをお忘れなく。 これは脂肪細胞が体内の主なレプチン源であり、腺として働くからだ。そればかりか、レプチンのレベルは体脂肪に直接相関している。そのため、ダイエットが進み脂肪が減っていくにつれて、定期的なカーボローディングはより一層有益となる。

以下はどの位頻繁にカーボローディングすれば良いかの目安である。体脂肪が25%以上の場合はカーボローディングする必要はない。15%に落ちると、2週間毎に24時間のカーボローディングを行えば、ダイエット中でも筋肉を保存することができ、空腹で気が変にならなくて済む。 体脂肪が10%になれば、毎週カーボローディングする必要がある。そしてついに6〜8%まで下がれば、1週間に2度ローディングしなくてはならないだろう。カーボローディング中はインスリンのレベルが高くなり、食事脂肪と併せるとその貯蔵を促進するので、脂肪の摂取はなるべく最小限に止める必要がある。 カーボローディング中「意識的」に摂取する脂肪は、オメガ3や、CLAなどの必須脂肪酸のみにするべきであるが、約14g(大さじ1杯)のフラックス(亜麻)油も有益だ。これらはすべてダイエットを行っている事を前提とした上の話で、カロリー摂取量はもとより普通以下でなくてはならない。 カーボローディングのカロリー摂取量は35kcal/kgまで増加するべきである。 1日のカーボローディング中のカロリー計算は次の様になる(タンパク質や炭水化物1gは4kcal、脂肪1gは9kcalあることを忘れないように):

体重1kgに付き、タンパク質を2.2g摂取することからはじめ、脂肪の摂取量を計算する。繰り返して言うが、この脂肪とはオメガ3、CLA、フラックス(亜麻)などの良い脂肪でなくてはならない。残りのカロリーは炭水化物から摂るのだが、長期ダイエットの経験者なら誰でもこれを制限するのがどれだけ辛いかよくご存知のはずだ。適切な炭水化物は、米、ジャガイモ、全粒粉のパン、パスタ、その他の低脂肪/低フルクトース(果糖)もの炭水化物などである。

レプチンのレベルを上昇させるもう一つの方法は、亜鉛とビタミンEのサプリメントを摂取することだ(7、8、9)。 これは何も極端に難しいことではなく、ただ亜鉛とビタミンEのサプリメントを摂るだけの話なのだ。どれだけ摂ればいいのか?毎日亜鉛を15〜30mgとビタミンEを400〜800IU、それだけでいい。

これから益々盛んにレプチンが話題になることは間違いない。インスリン抵抗性の人があるように、レプチン抵抗性になる人もいるため、レプチンの体脂肪減少に対する作用だけでなく、レプチン受容体を如何に活性化するかも含めて研究が行われている。脂肪減少のコントロールにレプチンが果たす最も基本的な役割は、近い将来製薬会社やボディビルダーの興味の標となることはもはや免れない。それまでは、ダイエットで脂肪を減少すると同時に筋肉も維持できるよう、上述した私のレプチンレベル至適化のガイドラインを利用して頂きたい。


参考文献
1. Kennedy GC. 1953. The role of depot fat in the hypothalamic control of food intake in rats. Proc. R. Soc. London Ser. B 140:578・2
2. Zhang, Y., R. Proenca, M. Maffei, M. Barone, L. Leopold, J. M. Friedman. 1994. Positional cloning of the mouse obese gene and its human homologue. Nature. 372:425-431
3. Wauters M, Considine RV, Van Gaal LF. Human leptin: from an adipocyte hormone to an endocrine mediator. Eur J Endocrinol. 2000 Sep;143(3):293-311.)(Harris RB. Leptin--much more than a satiety signal. Annu Rev Nutr. 2000;20:45-75
4. Heymsfield SB, Greenberg AS, Fujioka K, Dixon RM, Kushner R, Hunt T, Lubina JA, Patane J, Self B, Hunt P, McCamish M. Recombinant leptin for weight loss in obese and lean adults: a randomized, controlled, dose-escalation trial. JAMA. 1999 Oct 27;282(16):1568-75
5. Fruhbeck G, Gomez-Ambrosi J, Salvador J. Leptin-induced lipolysis opposes the tonic inhibition of endogenous adenosine in white adipocytes. FASEB J. 2001 Feb;15(2):333-40.
6. Heymsfield SB, Greenberg AS, Fujioka K, Dixon RM, Kushner R, Hunt T, Lubina JA, Patane J, Self B, Hunt P, McCamish M. Recombinant leptin for weight loss in obese and lean adults: a randomized, controlled, dose-escalation trial. JAMA. 1999 Oct 27;282(16):1568-75.
7. Chen MD, Song YM, Lin PY. Zinc may be a mediator of leptin production in humans. Life Sci. 2000 Apr 21;66(22):2143-9.
8. Mantzoros CS, Prasad AS, Beck FW, Grabowski S, Kaplan J, Adair C, Brewer GJ. Zinc may regulate serum leptin concentrations in humans. J Am Coll Nutr. 1998 Jun;17(3):270-5.
9. Isermann B, Bierhaus A, Tritschler H, Ziegler R, Nawroth PP. alpha-Tocopherol induces leptin expression in healthy individuals and in vitro. Diabetes Care. 1999 Jul;22(7):1227-8.


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