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筋繊維タイプ別トレーニング方法試論
By 山本 義徳 Yoshinori Yamamoto 

 今回のコラムでは、筋繊維のタイプとトレーニング方法との関係について考えて見ましょう。まず、一般的な事実、そしてその事実を踏まえた上での常識とされているものから確認してみます。

写真の使用許可:
http://www.muscletime.com

 筋繊維は大まかに遅筋(タイプT)と速筋(タイプUA、タイプUB)とに分けられます。またタイプUBの方がより速筋としての性格を持っているため、タイプUAは中間筋と呼ばれることもあります。
 そして人によってこれら筋繊維の比率は異なり、遅筋が多い場合は高回数、速筋が多い場合は低回数でのトレーニングが有効(少なくとも筋肥大に関して)である、というのが大方の意見でしょう。

 では、どのようにして自分の筋繊維組成比率を知ることができるか。ここでは簡単なテクニックとして、次のように「筋力曲線」を利用する方法をご紹介します。

1.
MAX重量を測る
2.
MAX重量の80%で、できるかぎりの回数を繰り返す
3.
平均的な筋繊維の比率であれば、8〜12回が可能
4.
速筋繊維が優位な場合、7回以下しかできない
5.
遅筋繊維が優位な場合、13回以上が可能

参考
専門的には外側広筋の筋繊維比率測定法として、次のような計算式もあります。

1.
50m走を計測し、秒速に換算する
2.
12分間で走れる最大の距離を計測し、秒速に換算する
3.
X=(1の秒速)÷(2の秒速)として、
4.
下記の式に代入する
速筋繊維の比率=69.8X−59.8

 例えば50m走が8秒だとすると、秒速6.25m。その人の12分間走が2800mだった場合、秒速3.89m。そしてX=6.25÷3.89=1.61ですから、
69.8×1.61−59.8=52.6%が速筋繊維である、となります。
 
 このような測定を行った上で、速筋繊維が多い場合は低回数で高強度、遅筋繊維が多い場合はやや高回数で行うべし、とされることが多いようです。ただし、「筋肥大を起こすのは速筋繊維が主であり、遅筋繊維を鍛えることに意味はない」という意見もあります。これはうなずける話で、遅筋繊維を酷使しているはずのマラソンランナーの脚が細く、スプリンターの脚の方が明らかに太いという実例からもわかることでしょう。みなさんもご存知のとおり、マイク=メンツァーを始めとする多くのトレーナーたちが推奨するトレーニング方法には、たいていこの実例が持ち出されています。

 ただし、意外に語られていない事実として「トレーニングによって、これら筋繊維タイプ間による移行が起こる」ことがわかっています。とりわけ完全に明らかになっているものとして、持久的トレーニングにより「タイプUB→タイプUA→タイプT」への移行が起こるということ。これは複数の実験によって証明されていますし、適応という身体の反応について考えてみれば実験するまでも無く推察可能な合目的現象です。
 さらにこの中で面白いことは、「タイプUB→タイプUAは移行が起こりやすいが、タイプUA→タイプTへの移行は起こりにくい」ということです。これは遅筋繊維を鍛えるために高回数トレーニングを行ったとしても、全体的な筋肉量の増大は起こりにくいということを表わしています。速筋繊維のトレーニングで遅筋繊維が刺激されることはあっても、遅筋繊維のトレーニングで速筋繊維が刺激(発達するだけの)されることは少ないわけですから。ただし後述する通り、ボディビルのトレーニングにおいては例外が起こります。

 しかし、ボディビルダーを対象に調べた結果、ウェイトリフティングなどの選手に比べると遅筋繊維の比率がはるかに多かったということが解っています。ある報告によれば、ボディビルダーのタイプU繊維は44%、800m走選手は52%、スプリンターやジャンパーは63%だったとしています。これはいったいなぜなのか。それについて考える前に、爆発的な運動(低回数トレーニング)のみを行った場合はどうなるかについて調べてみましょう。
 非常に興味深いことに、スプリントトレーニングや筋力トレーニングを6週間行った結果、どちらもタイプUB→タイプUAへの移行が見られたということです。適応、といった観点から考えれば爆発的運動のみを行うことによりタイプT→タイプUA→タイプUBというようになるはずなのに、これはどうしてなのでしょう。
 おそらく筋肉の活動様式自体よりも、トレーニングによる筋活動量そのものの増大による影響の方が大きいのだろうというのが研究者たちの見解です。トレーニング強度が高まるにつれ速筋繊維のミトコンドリア容量も増大せざるをえなくなり、タイプU間での移行が起こるのかもしれません。
 ただし、タイプT繊維は爆発的運動ではやはり増えにくいようです。パワーリフティングやウェイトリフティングの選手たちの筋組成を調べたところ、タイプUの断面積はタイプTの2倍の断面積を持っていたということです。

 さて、ボディビルダーに遅筋繊維が多い原因を考えてみましょう。通常のボディビルトレーニングは1セット5回〜12回程度で行われます。そして大抵のボディビルダーは、各セットしっかりと限界に近い状態まで追い込むようなトレーニングをしているでしょう。さて、その時に筋肉はどのような状態になっているか。一言で表すと「最大に近い張力で長い時間の筋収縮が起こっている」。これは他のスポーツと一線を画す現象です。
 筋肉が強い張力を発揮している状態では筋細胞の体積が大きくなり、それに伴って血管が押しつぶされます。すると酸素を筋細胞内に運び込むことができなくなるため、筋肉は少ない酸素を効率的に使おうとします。具体的にはミトコンドリア活性の上昇、ミオグロビンの増加などです。これは遅筋繊維の特徴であり、ボディビルダーのトレーニングにおいてタイプUA→タイプTへの移行が起こりやすいという可能性を示しているのです。
 なお、明らかに確認されたわけではなく、あくまでも傾向として示されているだけですが、高強度のレジスタンストレーニングによってミオシン重鎖が速筋型に変化する可能性があるということです。

 以上より、タイプTのみを標的としたトレーニングは筋肥大には効果が少ないということ、そしてタイプUをトレーニングすることによりタイプTも刺激される(肥大する)ということが解りました。ここで、筋肥大のみを目的とした場合、

1. タイプUBを標的としてトレーニングし、結果的にタイプUAの肥大も狙う
2. 最初からタイプUAのみを標的としてトレーニングする

この二つのどちらが有効なのでしょうか?

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http://www.muscletime.com

 もちろんピリオダイゼーションの考え方、すなわち3週間ほどで筋肉はある一定の刺激に適応してしまうという考え方から、両者を交互に行うほうがベストに近いのでしょう。これについては後述するとして、ここでは1と2、どちらが純粋に筋肥大を起こしやすいのかについて推論してみます。具体的には、低回数(ATP―CP系および解糖系、すなわち40秒以内)で爆発的な運動を行うか、中回数(酸化系の初期、すなわち120秒以内までの運動)で適度なテンポの動作を行うか、です。
 さて、収縮タンパク質、すなわち実際に力を発揮するのに関わってくる筋繊維の肥大率は、タイプUBの方が大きいということが明らかになっています。このことだけ考えれば1の方法の方が有効なはずですが、しかし筋肥大には収縮タンパク質以外に結合組織(特にコラーゲン)やミトコンドリア、毛細血管などの発達が関わってくるため、これらも考慮に入れる必要があります。
 特にこのなかでも筋肥大に関して重要なのはコラーゲンの肥大。これはコラーゲン繊維数の増加や架橋結合の増加、コラーゲン繊維密度の上昇、そしてコラーゲン繊維直径そのものの増大が見られます。さらに筋内結合組織に含まれる繊維芽細胞の活性化と、それに続く結合組織の網状構造の発達は、筋肥大のための前提条件だという報告もあります。
 では、コラーゲンはどのようなトレーニングによって発達するのでしょうか。
 怪我をしたときなど、一般には結合組織への血流を増加させるようなトレーニング、すなわちハイレップスの運動が行われます。しかしこれは栄養物質を運んでやるためであり、結合組織の肥大とは直接関係がありません。
 ここで興味深い実験として、動物にトレッドミルを数週間行わせて膝側副靭帯の変化を調べたものがあります。これによれば、平面を走った動物よりも凸凹面を走った動物のほうが、腱―骨接合部で著しい強度の上昇が見られたということです。また、高強度のネガティブ運動によってコラーゲンの増加が認められたとする実験もあります。
 これらはどちらかと言うと、低回数・爆発的運動に近いものとなるでしょう。さらにミトコンドリアや毛細血管だけではサイズ的に筋繊維全体の10%未満に過ぎないこと、またそれらは低回数・爆発的運動でもセットを繰り返すことにより十分発達することなどから、通常のウェイトトレーニングでは低回数・爆発的運動のほうが筋肥大には効果的だという結論になります。

 さて、前述したように「3週間以上同じストレスが続くと筋はそれに適応してしまう」ということから、長期間に渡って低回数・爆発的運動を続けないようにした方が効果的だと考えられます。その他、神経系の回復や関節の保護なども考え、ここで筆者としては次のような8週間プログラムを推奨いたします。

・1週目〜3週目 タイプUB、結合組織が標的。
4回〜6回を爆発的動作で行い、週ごとに重量を増加する。
・4週目〜5週目 タイプUB、結合組織が標的。
4回〜6回のフォーストネガティブ(※)。週ごとに重量を増加する。(※)フォーストネガティブ…ネガティブ時にパートナーに負荷を加えてもらい、できるだけコントロールしながら下ろす。挙上時はできるだけ自力で挙げるように心がける。
・6週目〜8週目 タイプUAが標的、神経系や関節の回復も狙う。
マシンを主に使い、12回〜15回で効かせる。

 6週目〜8週目にかけての回復期ですが、これには別の意味もあります。ここで先ほど触れた、「タイプUB→タイプUAの移行が起こりやすい」という事実を思い起こしてください。それに加えて「同じストレスが長期間かかると、筋肉はそれに適応する」という事実を。
 この二つを組み合わせることにより、「回復期にタイプUAを選択的にトレーニングしておくことにより、1週目〜5週目のタイプUBを標的にしたトレーニングの結果として起こるタイプUB→タイプUAへの移行が弱まるのではないか」。このような仮説が導き出されてきます。
 回復期にタイプUAに強い刺激が行くトレーニングを行って、タイプUAを刺激に充分慣れさせておく。そうすればタイプUBのほうに強い刺激が行く1週目〜5週目においてはタイプUAの適応(発達)は起こりにくいでしょう。
 
 以上、筋繊維タイプ別トレーニングというよりは、もっと一般的な内容になってしまいました。ただし多くのタイプ、すなわち「速筋繊維が優位」プラス「両者のバランスがとれている」ような方の場合は、ここに示した方法が効果を発揮すると思います。
 数少ない「遅筋繊維が優位」な方の場合でも、タイプUのトレーニングによってタイプTが十分に発達のための刺激を得ることが出来るということ、これは念頭において置くようにしてください。それでも、という場合は上でご紹介した6週目〜8週目のタイプUAのためのトレーニング期間を延長されると良いでしょう。その場合においてもストレスへの適応現象を考え、6週間を超えないようにしてください。

 蛇足ながら最後に、プロビルダーなどで低重量高回数のトレーニングをやっている人が多いのはなぜかについて説明します。第一に挙げられる理由として、既に充分なバルクが出来上がっているということ、選手寿命を長くするために怪我を恐れてしまっているということがあります。次にホルモン系物質の多用による赤血球の増大や組織内水分の増大、ミトコンドリア量の増大が起こり、遅筋繊維の発達しやすい条件が揃っているということが挙げられます。ナチュラルなトレーニングを志している方は、このような方式を真似る必要はありません。


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