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局所用プロホルモンの科学的裏付け
By パトリック・アーノルド Patrick Arnold

局所用プロホルモンサプリメントが、消費者の間で人気を集めるようになってから、その作用の仕組みについての質問が、筆者のもとに殺到するようになった。どうも皮膚に塗布したプロホルモンが、どのようにして体内に取り込まれ、効果を発揮するのかが良くのみ込めない人達が多いようなのだ。 あるいは、薬物の経皮デリバリーという概念を全く誤解して、局所用プロホルモンは局所的に筋肉を肥大させると思い込んだりしているらしい。 (例えば、ふくらはぎにスプレーすると、ふくらはぎだけが肥大するという具合に。)

本稿では、薬物の経皮吸収について薬理学的に検討し、特定の物質が、いかに効率的に皮膚を通して血液循環に取り込まれるのかを説明してみよう。また、経皮デリバリーが、体循環中のホルモンのレベルに持続的効果を持つこと、そして運送される物質(すなわち、プロホルモン)の形態が、皮膚からの吸収と体内への取り込みに如何に大きな影響力を持つかについても触れることにしよう。

経皮的経路
[角質層]
皮膚の表面を覆っているのが角質層で、偏平で堅く、楯の様な細胞からなっており、絶えず剥げ落ちては、下層部から押し上げてくる細胞によって補充されている。角質層は、下部の皮膚層からの水分の蒸発を防ぐと共に、外部からの浸透に対する主要防御機構としての働きもしている。角質層の厚さはさまざまで、手のひらや足の裏では1mm、顔やその他の身体部分には0.1mmのところもある。角質層からの薬物の浸透率は、一般的に層の厚さに比例しており、 陰部、瞼、耳介後方部(耳のうしろ)は特に薄いので、これらの部分の皮膚からの浸透は特に速い。角質層の厚みだけが経皮吸収速度を左右する訳ではなく、その他、次の様な要因もあげられる。

1. 分子の大きさ。分子量が500以上の物質は、皮膚浸透性が悪い。プロホルモンの分子量は300弱である。
2. 分子の親脂性 (油溶性)。一般的に分子の親脂性が大きい程、角質層を浸透しやすいが、親脂性が極端に大きい分子は逆に浸透性に劣る。プロホルモンは、経皮吸収に都合のよい親脂的特性を持っている。
3. 薬物形態。何らかの液中に溶解した物質 (液体プロホルモンスプレーなど) は、固形形態よりも浸透性がある。
4. 薬物投与部の角質層の状態。 湿疹、乾癬、あるいは皮膚の引っ掻き傷さえもその部分の皮膚の浸透性を著しく高める。
5. 薬物に添加するとその浸透過程を速める「皮膚浸透促進剤」として知られる物質 の存在。浸透促進剤として良く知られている物質の一つに、DMSO (ジメチルスルホキシド)があり、その他、IPM(イソプロピルミリステート)、 アゾン、サリチル酸、尿素などがある。

ひとたび角質層の防御層を超えるた物質は、表皮の下層部に拡散し、真皮 (皮膚の主要層)にたどり着く。真皮は、水分を多く含んだ生細胞からなり(反対に表皮は、死細胞からなる)、血液とリンパ液などで豊かに満ちている。その豊富な体液によって、物質が真皮から血液やリンパ系に運ばれてゆくのだ。物質がそれを吸収する真皮にたどり着くまでの過程は、大抵の場合かなり長い。角質層とその下層部の表皮を通過するのに長い時間がかかるからだ。表皮の細胞配置密度と、油脂分の多い性質のため、プロホルモンの様な親脂性物質は保留され、結果として体循環への吸収に全体的な持続的効果をもたらす。

経皮投与ステロイドと、プロホルモンの薬理動態
薬物の経皮デリバリーの利点は二つある。第一は、薬物が肝臓における初回通過代謝をバイパスする形で、体内に取り入れられることだ。プロホルモンの活性は大抵、この初回通過代謝で消滅してしまうため、これをバイパスする事は非常に都合がいい。第二に、経皮デリバリーは、持続放出的な薬理動態効果を生じる事である。薬理動態学とは、薬物の吸収、分布、代謝、排泄などの速度過程を調べる学問のことだ。 薬物の薬理動態プロフィールは、その薬物の血中濃度の経時的変化を測定する事によって決定できる。プロドラッグ(プロホルモン)場合は、活性代謝物質の血中レベルを測定してもよい。

プロホルモンやその他のステロイドの薬理動態を調べた研究は幾つかある。1986年に行われた研究 (JCEM* 62(2)、441―4) (*訳者注: Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism) では、1回用量に50mgのアンドロステンジオンを含む水性アルコールジェル (水性アルコールジェルは、単に活性成分、アルコールおよび水分から成り、それに溶液をジェル化するためのポリマーとpH調整剤を添加したもの) を、正常健康体の女性5人の腹部皮膚に1日2度塗布した。その結果、血漿中のアンドロステンジオンとテストステロンのレベルは6日間進行的に上昇した後、アンドロステンジオンはベースラインの4〜5倍、テストステロンは、3〜4倍で安定した。この様に血中レベルがピークして持続する事を、薬物が「定常状態」に達したという。 この、5人の女性を被験者とした研究で見られるように、毎日同じ方法で薬物を投与し続けると、個人の薬物代謝能に変化が起こらない限り、定常状態が保たれる。

第二の研究 (Journal of Investigative Dermatology 52(1):89−94) は、非常に包括的なもので、プロホルモンや活性ステロイドホルモンを含める広範囲にわたる多種ステロイドの薬理動態を調べている。それぞれのステロイドを別々にアセトン溶液に添加したものを、男性の前腕に塗布して実験が行われた。 アセトンは蒸発させ、ステロイドは24時間後に、水と石鹸で皮膚から洗い落した。実験に使われたステロイドは、皮膚から吸収されるより速く排泄されることが解っていたので、経皮浸透率を正確に測定する方法として、それらステロイド代謝物質の尿中測定値が使われた。ステロイドの吸収率には様々な相違がみられた。 アンドロゲンに関する限りでは、DHEAの吸収が最も速く、続いてテストステロン、それに次いでアンドロステンジオンであったが、両者には大差はなかった。 又、吸収は非常にゆっくりで、持続的効果がある事を示した。驚いた事に、ステロイドをこの方法 (有機溶剤に添加して皮膚に塗布する) で投与した場合、24時間後に洗い落とすまでの間に、実際に皮膚を通過した量は、ほんの僅かである事がこの研究で明らかになった。最も速く吸収されたステロイドでさえ、皮膚を通過して体内に取り入れられたのは、何と18.45%に過ぎなかった。という事は、1日後に被験者達が前腕を洗った時点では、81.55%が水と一緒に洗い流されてしまったことになる。この事実から解ることは、経皮投与ステロイド(プロホルモン)の吸収を増やそうと思えば、水と石鹸を使って身体を洗うことをやめるか、あるいは、経皮製剤に何らかの物質を添加して、ステロイドの皮膚浸透率を高める他ないという事だ。

浸透促進剤
前述の研究対象となった製剤は、新たに人気を得始めたプロホルモンスプレーに非常に近似しているため、その研究結果は特に意味がある。 揮発性有機溶剤 (例えば、アセトン、イソプロパノール、エタノール、ジクロロメタンなど)に溶解したステロイドホルモンを、皮膚に塗布して実験が行われたのだが、このような調剤では、溶剤はたちまち蒸発してしまい、ステロイドが皮膚表面に残される。この研究で示されたように、こうした製剤の吸収は大変遅く、毎日入浴したりシャワーを浴びたりすれば、用量の僅かしか利用されない結果になってしまう。

経皮投与薬の製薬には、普通浸透促進剤が使われている。これらの促進剤は、角質層の浸透性を変化させる事によって物質の経皮浸透速度を速める作用をする。吸収速度が速ければ、一定時間内に吸収される薬物の量も多くなるのだ。 普通、経皮投与された製剤が何日も皮膚に残されている事はないので、浸透率のスピードアップは製剤の有効性にとって、重大な意味を持つ。浸透促進剤使用の製剤として良く知られた薬剤に、広く宣伝が行き渡っているUnimed Pharmaceuticals 社のアンドロジェルRがある。この製品は、テストステロンを有効成分とした水性アルコールジェルで、前述の5人の女性を被験者として行われた研究における、アンドロステンジオンジェルに非常に良く似ている。 但し、重要な違いが一つあるのだ。 それは、アンドロジェルRには、浸透促進剤のイソプロピルミリステート(IPM)が添加されている事である。IPMは脂肪酸エステルで、化粧品や製薬用の使用が認められている。その浸透促進剤としての作用機序は、角質層からの脂肪の除去に関連すると考えられている。 この過程で角質層に微細な穴が生じ、そこから物質が運送される。IPMには又、皮膚を覆って水分を封じ込む皮膚軟化剤としての作用もあり、それによって皮膚の透過性を更によくする。 IPMの様な浸透促進剤を添加した製剤の利点は、アンドロジェルRの薬理動態を、前述のアンドロステンジオンジェルのそれと比較して調べてみるとよく解る。前述の通り、それらの製剤は両方とも水性アルコールジェル製剤である。 また、アンドロステンジオンとテストステロンの吸収率にはほとんど大差がない。唯一の有意な違いといえば、アンドロジェルRには IPMが添加してある事のみである。アンドロジェルRに関する文書によれば、テストステロンレベルは、投与後早くも30分程で上昇し、24時間程で定常状態のレベルに達する。 これを、定常状態を確立するまでに6日もかかったアンドロステンジオンジェルと比較してみるとよい。 有効成分であるステロイドの浸透速度に、IPMが大きく影響している事が、これで明らかではないか。

局所用プロホルモンスプレーサプリメントは、最新技術のプロホルモン経皮デリバリーだ。現在、二つの主要なプロホルモン スプレーが市場に出ている。両製品ともアルコールを含有するが、IPMを添加してあるのは、Ergopharmのアンドロスプレーと、ノルアンドロスプレーだけなのだ。 IPMはスプレーの浸透効果を高めるだけでなく、皮膚のしなやかさを促進する皮膚軟化剤としての効果もある。 IPMは又、皮膚の水分を閉じ込めて、スプレーのアルコール成分による肌の乾燥を防ぐ。 実際、アルコール入り製剤の使用を繰り返していると明らかに肌の乾燥が問題となるが、IPM添加の製剤の使用でそれが問題になることは先ずないといえる。

結論
この記事を読んで、経皮吸収に関する基本的な知識を得ると共に、プロホルモンの局所用サプリメントの仕組みについてもう少し理解が深まったはずだ。経皮デリバリーの利点や弱点を知り、経皮製剤から如何に最大限の効果を得ることができるかについて、お分かり頂けただろうか。読者諸君が、現在市場に出ている局所用プロホルモンサプリメントの評価をされるにあたって、これらの知識が役に立つ事を切に望んでいる次第である。


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